TONE ~シークレットライブ~
 キーンと一番端の鍵盤を叩く。

「俺が楽しむためのライブだから、さ」

 振り向いた視線の先はユウ。

「俺の夢、叶えてよ」

「わがまま」

「今更だろ」

 タキがユウをほらと促す。

 近くで見たピアノ前に立つ彼は、間違いなくあの時の彼だった。

「曲は?」

「あの時のがいいなぁ」

「今、夏前だけど」

「いいじゃん、真夏のクリスマスって感じで」

「……タキさん…」

 ユウは側にいたタキに何かを言付けると、タキはソデに一旦姿を消す。

 そして間を置かずにすぐに戻ってきた。

 手でOKのサイン。

 なんだろうと不思議に思うものの、ユウがピアノの鍵盤を端から一気に鳴らし、ポーンとひとつの音をとる。

 音の調律は大丈夫のようだ。
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