ペチュニアの恋文
もしかして、毎年直接ウチまで届けに来てくれているのだろうか?

そして、それが出来るくらいの所に住んでいる?

色々考えてしまうところだけれど。


(でも、それなら会うことだって出来る筈だし…)

敢えて『16歳の誕生日に』と言わずとも、最低限年に一度は会える機会があるのではないのか?と思うのだ。

でも、いつも届いている時間に決まりなどはなく、気が付けばポストに投函されているか、花束などがあった年は玄関前に手紙が添えられて置かれたりしていた。

だから、ユウくん本人ではなく、誰かに頼んだりしているのかも知れないと思うことにした。

(それはそれで、何だか逆に申し訳ない気持ちにもなるけど…)


けれど、それももう終わる。

きっと今年はないだろうから。

そういう意味では、今年直接ユウくんに会えるのは嬉しい。

彼に会えたら、これまでのありがとうの気持ちをきちんと伝えたい。そう、思っていた。



「でもさ、子どもの頃って、どこの誰だか知らなくても友達になれちゃうから不思議よね。遥のそのお友達も、その典型でしょう?」

母がどこか感慨深げに言った。

「うん。それは、そうかも」


実際、私はユウくんのことを何も知らない。

住んでいる所は勿論、本当の名前さえも。

蒼くんの本名を中学で初めて知ったのと同じで、ユウくんは私にとって『ユウくん』以外の何者でもなく。

こちらに住んでいた時の家さえも知らなかった。
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