ペチュニアの恋文
もしも「そんなこと覚えてない」って言われたら、それはそれで何だか寂しいけれど、下手に気まずくなるぐらいなら忘れてくれてる方がまだ良いかも知れない。


でも、会おうっていう約束はきっと…覚えてくれてるよね…?



母親が夕食の片付けに取り掛かる頃、遥は自分の部屋へと移動した。

明日の学校の準備を終え、ふと思い出したように机の一番上の引き出しから、ある一つの箱を取り出した。

某テーマパークのキャラクターたちが可愛くデザインされている、お土産のクッキーが入っていた缶箱だ。

それをそっと開けると、中には幾つかの封筒が入っていた。

全部で六通。

それは全て、以前誕生日に届いたユウくんからの手紙だった。


(これとこれが、一年目と二年目に届いたやつ…)


最初の二通のみ、僅かに厚みがある。

実は、届いた手紙は二年目までは彼の直筆の手紙が入っていたのだが、それ以降は市販のバースディカードと、小さなしおりが同封されていたのみだった。

(…懐かしい…)

手紙を広げると、小学生の男の子らしい元気な字が鉛筆書きで記されていた。

内容は至って簡単なもので『げんきか?』から始まって『たんじょうびおめでとう』とか、そんな程度だ。

でも、最後に書かれていた『がんばれ、ハルカ。オレもがんばる』というコメントがユウくんらしいなぁと、ずっと思っていて。

(この言葉に何度も元気づけられたんだよね…)
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