ペチュニアの恋文
私は、そんな蒼くんを見ているのが好きだった。

そう。私は蒼くんのことが好きだった…んだと思う。

ユウくんのことも好きだったけど、蒼くんに対する『好き』は友達の好きとは少し違う気がするのだ。

今でも当時のことを思い出すだけでどこか胸が痛むような、軋むような、そんな感じがして。

それは多分、もう蒼くんのあの笑顔を見ることは敵わないと知っているから…。


笑顔を思い出すだけで、切なくて。

蒼くんが公園へ姿を見せなくなった後、偶然通りでばったり会った時の、あのバツの悪そうな顔が頭から離れなくて。

無言で走り去っていった、その後ろ姿が忘れられなくて…。


(こんな想い…。今更なのにな…)


結局、蒼くんにペチュニアの花を貰うことはなかった。



あの後…。

ユウくんが傍までやって来て。

「二人で何してんだ?ハルカ、何かうれしそうだな?いいことでもあったのか?」

「うん。あのね、アオくんがお花くれるっていうのっ」

私は嬉しくて、それを隠すことなく言った。すると、

「何だ?ハルカは花がほしいのか?それなら、オレがプレゼントしてやるよっ」

「えっ?ユウくんが?でも…」

「なっアオ?オレがハルカにあげたっていいよなっ?」

そう確認を取るように、ユウくんは私の後ろで黙って耳を傾けていた蒼くんに声を掛けた。

すると、蒼くんは一度だけ私を見て。

「うん」

小さく頷くと。

「よかったね、ハルカ」

僅かに微笑んだのだった。

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