ペチュニアの恋文
連絡手段がないなら尚更だ。

ユウくんも私も、お互いの電話番号さえ知らないのだから。

でも…。


(本当は、来なかった時の言い訳を考えておきたいだけなのかも知れない…)


自分が落ち込まない為の…。

傷つかない為の、保険。


考えに沈んでいたら朋ちゃんに心配そうに見つめられていて、慌てて「大丈夫だよ」と、笑顔を見せた。

「会うことが出来たとしても、出来なかったとしても…。明日、話…聞いてくれる?」

おずおずと聞いてみると、朋ちゃんは満面の笑顔で応えてくれた。

「モチロン!明日は絶対、お茶して帰ろうねっ」

「うんっ」

そう、約束をして。

普段通り駅で別れると、一人電車へと乗り込んだ。




いつもの駅からの帰り道。

徐々に近づいてくる、思い出の公園。

陽は既に傾き、オレンジ色の西日が辺りの家々を明るく照らしている。

まだまだ遊んでいる子どもが多い時刻だ。

でも、よくよく考えてみたら待ち合わせ時間なんか何も決めていなかった。

そんなことで、よく『約束』が成立するもんだなぁとは思うけれど。

(でも、いつだって私たちが遊ぶ時は時間なんか決めたりしていなかったよね)

それでも公園に行けば会える。それが、ある意味での『約束』だったから。


遥は緊張しながらも公園の入口へと真っ直ぐに向かった。

やはり、まだ遊んでいる子どもが多い。

遥は意を決するように一つ深呼吸をすると、公園の敷地内へとゆっくり入って行った。

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