ペチュニアの恋文
広い公園の中、よく三人で遊んでいた一角へと向かう。

そこは、ユウくん達に初めて出会った場所でもあった。

子ども達が多く集まる遊具が置いてある場所からは少し離れ、奥まった場所であるそこに他に人はなく、遥は汚れていないのを確認すると置いてあるベンチへとそっと腰を下ろした。


(ユウくん、来るかな…?)


ドキドキしてしまう気持ちを紛らわすように、周囲の木々へと視線を移す。

西日に照らされて透ける薄黄緑色の葉が綺麗だった。

緩やかな風に葉擦れの音がさわさわと聞こえ、次第に気持ちが落ち着いて来る。

(もし、来なかったとしても…。責めるような気持ちにだけはならないようにしよう)

自分で自分に言い聞かせた。

ユウくんに対して、そんなこと思う筈ない。そう思っていながらも、会えなかったらそれはそれで、きっとショックに違いないだろうと思うから。

心の準備だけはしておきたい。


遥は鞄を胸に抱えるようにしながら、大きく深呼吸を繰り返した。




徐々に陽が傾き、周囲に影を落とし始める。

公園内の子ども達も少しずつ減っていく。


目に見えて人が減っていく中、自分だけが残されていく感覚は、何とも言えない疎外感や孤独感を生む。

(寂しい光景ではあるけど…。でも、何だか懐かしいな…)

昔、いつだって最後まで公園に残っていたのは自分だった。

暗くなっても迎えに来る者などいない。ひとりぼっちの自分。

そこから救ってくれたのが、ユウくんと蒼くんだった。
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