ペチュニアの恋文
「いつも暗くなるまで…暗くなってからもずっと遊んでたよな。三人でさ…」

「うん」

遥もその言葉に顔を上げると、自分たち以外誰もいなくなった公園内を眺めた。

「懐かしいな。随分前のことなのに、ここは変わらないんだな…」

感慨深げに呟く。

遥がこちらを見たのが分かった。だが、視線を前に向けたまま言葉を続ける。

「でも、時が経てば人は変わる。遥は、あまり変わってなかったけど…俺は本音を言うと変わっていて欲しかった」

「え…?私…?」

「うん。俺のことも、ユウのことも…。もっと過去の物にしていて欲しかった。そうであれば、傷付けずに済むと思っていたんだ」

「蒼くん…」

「今日のユウとのことも時間[とき]が経てばいずれ忘れる。俺は、その方が良いと思っていた。遥が傷付かなくて済むんじゃないかって…。でも、ダメなんだな。それだと、また遥から…。現実から逃げることになるだけだ」

「現実から、逃げる…?」

「ああ。俺がこの公園に来なくなったのも、遥に合わせる顔がなかったのも…。全部、俺の弱さが招いたことなんだ」



『いえない。ハルカには…』

こんなこと言えるわけない。

『でも…どんなかおをして会えばいいの?』

隠し通せる自信がない。


…弱い俺は、遥から逃げた。



「遥を悲しませたくなかったのもあるけど、言えなかったんだ」

遥に視線を向けると、遥は大きな瞳を見開いて俺を見ていた。


「ユウが引っ越したというのは嘘だよ。ユウは病気だったんだ」

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