ペチュニアの恋文
嫌な予感ばかりが頭を過ぎる。

そんな中、蒼くんが僅かに視線を落とすと愚痴るように呟いた。

「…ったく、ユウの奴…。俺にばっかり、こんな役を押し付けるなよなっ」

何処か皮肉を込めたような笑みを浮かべる。

「蒼くん…」

明らかに躊躇している。

蒼くんにとって言いにくいこと。言いたくないことであるのに違いない。

「遥…。とにかく、ユウは今日『来なかった』んじゃなく『来られなかった』んだ。それで納得することは出来ないか?どうしても、ユウのことが知りたい…?」


本来なら、このニュアンスで解ってあげるべきなのだろう。

ユウくんは重い病気を患っていて。

ずっと闘病生活をして頑張っていた。

でも、今日来ることが出来なかった。

それで理解して欲しいと…。


蒼くんは、私を傷つけない為だと言った。

真実を伝えることが出来なかったから私を避けていた、とも。


(でも…。それなら、私は……)


「ごめんね、蒼くん。私は、もう…何も知らないままなんて嫌だよ。ユウくんのことも蒼くんのことも、二人のことが大切だから。ユウくんが今どういう状況なのか知りたい。そして…」

驚いたような顔でこちらを見ている蒼くんに、泣きそうになりながらも笑顔を向けた。

「蒼くんがずっと…苦しんでいる理由も知りたいよ」

「はるか…」

「お願いだから…。もう、私から逃げないで…」


蒼くんが胸に秘めることで苦しんでいるのなら。

私も一緒に、それを共有したい。

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