ペチュニアの恋文
私の言葉に。蒼くんは、それでも迷うような素振りを見せていたけれど、ジッと見つめ続ける私の本気を汲み取ってくれたのか、心を決めたように「わかった」と、小さく頷いて見せた。

そうして、ぽつぽつと蒼くんの口から語られた真実は、私の想像を遥に超えるものだった。

蒼くんの言い回しで、何となく良くない状況であることだけは想像出来ていたけれど。

まさか…。


「ご…ねん、まえ…?」

「ああ。もうすぐ五年になる…。ユウは十一歳の誕生日を迎えてすぐに、亡くなったんだ」

「……っ…」


その、あまりに信じられない事実に。

何も言葉が出てこなかった。

でも、実感も何も湧かなくて、涙すら出てこない。


「こんなこと…今日誕生日のお前に聞かせる話じゃないだろう?デリカシーがなくて、ホントごめんな…」

申し訳なさそうに小さく息を吐く蒼くんに、ぶんぶん…と首を振った。

「蒼くんは悪くない…っ…。だって、私が…っ…」

聞きたいって無理強いしたのに。

そんな声にならない言葉を蒼くんは聞き取ってくれたようだった。

こちらを気遣うような、優しい笑顔を向けてくれる。

「アイツもさ、本当にデリカシーがなくてさ。自分が遥との約束を守れそうもないからって、俺に行ってくれなんて平気で頼むんだ。酷い話だよ…。遥はユウに会うのを楽しみにしてるっていうのに、俺にどんな顔して会いに行けって言うんだ」

最後はぼやくように。だが、その横顔はどこか友人を懐かしむような、そんな表情をしていた。

< 37 / 56 >

この作品をシェア

pagetop