ペチュニアの恋文
「オマエ。まだ、かえらねぇの?」


夕日に赤く染まる公園で。

一人花壇の花を見つめながら座り込んでいた私の後ろから二つの影が差した。

振り返ると、そこには知らない男の子が二人。不思議そうに私を見下ろしていた。


「もうみんな、かえっちゃったぞ?オマエ、かえんないのか?」

そう言われて周囲を見渡してみれば、賑わっていた公園はもう自分たち以外誰もいなかった。

「うん。まだ…ここにいるの」

母が仕事から帰ってくるまでは、まだ少し時間があった。それまで外で時間を潰していたかった。

だが、そうして話している間にも見る見る空は暗くなり、夕方から夜へと変化を始めていた。

公園内の街灯が一斉に点灯して、思わず三人でそれを見上げる。

「おうちのひと、しんぱいすんぞ?」

心配してくれているのだろうか。自分たちだって同じくらいの小さな子たちなのに。

「しないよ。だれもいないもん。おかあさん、まだ…おしごとしてるから…」

言ってて何だか悲しくなって語尾が小さくなっていく。

「…だから、まってるの」

泣きそうになるのを耐えるように、再び花壇の方に向き直って膝を抱えた。

すると…。

「ふーん。なら、オレたちといっしょにあそぼうぜっ」

「え?」

意外な言葉が返って来て、驚いて振り返った。

「なっ?あお?いっしょにまっててやろうぜ?」

「うん。そうだね」


それが、ユウくんと蒼くんとの出会いだった。
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