ペチュニアの恋文
「もしかして…そのことを根に持ってたり、する?」

ワザと悪戯っぽく見上げて来るユウに。

「別に」

俺はふい…と横を向いた。

そんな俺のつれない反応に、ユウは楽しそうに笑い声を上げる。

「オレとしては、さ…。いっつも二人で花の話とかで盛り上がって、二人の世界作ってるからさ。嫉妬してた位なんだぜ?遥、花が好きだろ?でも、オレは蒼みたいに花のこととか全然分かんねぇし」

「………」

「そこにちょっと割り込んだつもりがさ、蒼は普通に何でも譲ってくれちゃうからさ。まぁ…オレはオレでそれに甘えちゃってたんだし、エラそうなことは言えないんだけど」

そこまで言うと、ユウは気だるげにそっと目を閉じた。

「でもさ、もうエンリョなんかすんなよ。お前はお前だよ、蒼…」

「ユウ…」

唯一元気のある光の宿った瞳を閉じてしまっているユウは、顔色が白く何処か生気が感じられなくて、見ていていたたまれなくなる。

自然と顔をしかめかけた俺をユウの瞳が再び捉えた。


「遥のこと、頼むな。アイツ寂しがり屋だからさ」


それだけ言うと、「なーんて。オレがエラそうに言えた義理じゃないけどな」…なんて小さく笑った。

だけど、それではまるでユウがいなくなること前提の話のようで俺は怒りを露わにした。

「勝手に『頼む』とか言うな!この手紙だって自分でちゃんと渡しに行けよなっ。俺は預かるだけだからなっ!」

そう言って、その時は病室を後にしたのだった。

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