ペチュニアの恋文
遥は、蒼から受け取った手紙を大事そうに両手で胸に抱えると、祈るように瞳を閉じた。
(ユウくん…)
まさか、ユウくんがそんなに辛い思いをしていたなんて知らなかった。
昔貰った手紙に書いてあった『がんばれ、ハルカ。オレもがんばる』。
あの言葉は、そういうユウくんの状況も含まれていたんだね。
(何も知らなくて…本当にごめんね。でも、私はそんなユウくんに沢山の元気、貰ったよ)
本当に感謝の気持ちで一杯だった。
そして、この手紙を届けてくれた蒼くんにも。
蒼くんは、私を傷付けたくなかったと言った。
真実を言えない苦しさと闘って、それを自分の弱さとして負い目を感じて。
(本当は、それこそが蒼くんの優しさ、なのにね…)
『折角の誕生日に悲しい思いなどさせたくない』
『知らない方が幸せだと思った』
そこまで気遣ってくれていたなんて…。
「本当にありがとう、蒼くん。全部話してくれて…。この手紙も届けてくれて…」
溢れ出る感謝の気持ちのままに隣に座る蒼くんを見上げて礼を口にすると。
「…うん」
蒼くんが僅かに眉を下げて微笑んだ。
全部話してくれたことで、蒼くんも少し気持ちが楽になったんだろうか。
昔と変わらない、その柔らかい表情に心の中が温かくなる。
「この手紙、今ここで読んでも良い?蒼くん、待っててくれる…?」
「別に構わないけど…。家でゆっくり読んだ方が良いんじゃ…」
その言葉に「ううん」と私は首を横に振った。
「蒼くんの隣で、読ませて欲しいんだ」