ペチュニアの恋文
動き始めた時間
陽が陰り、すっかり薄暗くなってきた公園内。

ベンチに腰掛けたまま、遥は蒼から受け取った手紙の封を膝上に乗せた鞄の上でそっと開いた。


体調が思わしくないのに、今日の…この日の為にユウくんが書いてくれたという手紙。

純粋に、その気持ちが嬉しかった。


でも…。ユウくんは、もういない。


そう思うと、何だか手紙を読むのが少しだけ怖くなった。

蒼くんから話を聞いても未だに実感が湧かなくて。

私の中のユウくんは、引越すのだと聞いた7年前に別れたあの時の元気な姿のままだ。

その後、翌年・翌々年の誕生日に貰った手紙を通してのユウくんも、別れた時のイメージと何も変わらないままだった。

だけど…。

今、この手紙を読んでしまったら…。

私の中でのユウくんの止まっていた時間は、きっと動き出してしまうのだろう。

そして…。

もう、会うことは叶わない。

その現実を思い知らされてしまうのが何より…怖い。


思わず緊張で手が震えそうになるが、ふと隣を見上げると蒼くんが静かに見守っていてくれて。

それだけで自然と心が落ち着いてゆくのを感じた。


遥は小さく深呼吸をひとつだけすると、数枚重なって折り畳まれている便箋をゆっくりと広げた。

そこには懐かしい筆跡で、だが以前貰った手紙よりも幾らか丁寧な文字でしっかりとボールペンで書かれている。

周囲はかなり暗くなってきていたが、ベンチ横には街灯があるの難なく読むことが出来そうだ。
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