ペチュニアの恋文
「蒼くん、私ね…。蒼くんとまた、こんな風に一緒に話せるようになってすごく嬉しいんだ」

読んでいた手紙をそっと折り畳み、膝の上に置く。

蒼は俯いたままの遥の言葉に静かに耳を傾けてくれている。

「ずっと嫌われてると思ってたし、もう面と向かって会うことも話すこともないんだなって思ってた。でも…今日、こうして蒼くんとまた会えた」

そこで区切ると、遥は蒼に向き直って笑顔を見せた。

「それは、この手紙のお陰だね。ユウくんが蒼くんに会わせてくれたんだね」

「遥…」

「ありがとうね、蒼くん。最高の誕生日プレゼントだよっ。ユウくんからの手紙も、蒼くんがこうして傍にいてくれることも」


二人に会えなくなることで止まってしまっていた思い出だけでしかなかった時間は、今…動き始めた。

ユウくんには二度と会えない。その事実は悲しいけれど。

でも、約束を覚えていてくれた、そのことが何より嬉しくて。ありがたくて…。

会えなくても、この手紙の中には今の自分に語り掛けてくれるユウくんが確かに存在してくれている。

過去のものなんかじゃなく、今も傍にいてくれているような温かな想いが詰まってる。


「私、二人に出会えて良かった。蒼くんとユウくんに会えて、本当に良かったよっ」

心からの笑顔を浮かべる遥の頬に、今度は嬉し涙がひとしずく零れ落ちた。


『オレは、ハルカとの約束があったから長い入院生活もがんばれたんだ。ありがとな、ハルカ。』

『ハルカは、いつだって幸せに笑っていてくれよな!』

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