ペチュニアの恋文
声を掛けてきてくれたのが、ユウくんだった。

いつも元気で人懐っこい性格で。誰とでもすぐに仲良くなれちゃうタイプで。

何でも器用に出来て運動神経抜群。

どんな遊びをしても誰もがユウくんに敵うことはなかった。

そんなユウくんと、いつも一緒にいたのが蒼くんだった。

蒼くんはユウくんとは違って大人しい男の子で。

何でもそれなりに出来るけど、あまり人と争うことを好まない穏やかな性格だった。

それに何より印象的だったのは、意外にも花のことに詳しい、自分の周囲ではあまり見掛けないタイプの男の子だったことだ。

子どもの頃から花が好きだった私は、公園内に咲いている花や木々をよく眺めたりしていたのだが、蒼くんはそれらの名前も良く知っていて様々なことを教えてくれた。

蒼くんと一緒にいると、他の男の子達とは違う、どこかホッとした気持ちになったのを覚えている。



駅から自宅へと向かう道のり。

先を歩いている、その蒼くんの後ろ姿を遠く見つめる。


思い出の中の彼とは違う、スラリとした長身。

もう過去の面影など、その後ろ姿には残ってはいない。

時が過ぎれば、人は成長して変わっていく。

それは、この世界では普通のことだ。


どんなに忘れたくない綺麗な思い出も。

失くしたくない大切な過去も。

全てが遠い記憶の中の、ヒトカケラでしかない。


(もう、あの頃のように話をすることなんて…ないんだろうな)
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