ペチュニアの恋文
「これ…どうして…」

手の中の押し花に釘付けになっていると。

「遥は覚えてるか分からないけど、その花はペチュニアっていうんだ」

蒼くんが以前のように教えてくれる。

「覚えてるよ。覚えてる…。だって、大好きな花だもん。昔、蒼くんが教えてくれたよね?」

「うん…」

少しはにかみながら蒼くんが頷いた。

(もしかして、私が好きだって言ってたのを覚えていてくれたのかな?)

じーん…と胸が温かくなる。

「このしおり…。駅前の花屋さんの、だよね?もしかして…蒼くん?毎年、誕生日にカードを届けてくれてたの…って…?」

誕生日に届くこのしおりのことはずっと気になっていたのに、今日は色々なことがありすぎて、すっかり頭から抜けていた。

「ああ。ユウから預かった手紙を届けていたのは全部、俺だよ。その…ユウが手紙を書けなくなってからは、俺が勝手にその役を引き継いでしまったんだけど…」

「蒼くんが…」

その事実にも、また驚きを隠せない。

(蒼くんだったんだ…。今までのしおりも…)


『ハルカのたんじょうびに、この花をプレゼントするよ』


(あの約束を覚えていてくれたのかな…?)

もしも、そうだとしたら嬉しくてたまらない。



ずっと、嫌われてしまったのだと。

途切れてしまったものと思っていたのに。

まさか…。

毎年、誕生日にカードを届けてくれていたのが蒼くんだったなんて。


「綺麗だね…。ありがとう。大切にするねっ」

遥は心から感謝の気持ちを述べた。
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