【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー
「ムギ、こんな寒いのにお前もうちょっと着込めよ」
慣れた手つきでマフラーを私の首元に巻いてくる流。
冷えた首元が一瞬で熱を持ち始めて...流の匂いがする。
「わっ、私は大丈夫だよっ!
それに流が冷えちゃ...」
「いい、俺は男だし。
ムギが風邪引いたら俺が困るの」
「...っ、私は流が風邪引いたら困るよ...?」
「おーおー可愛いこと言うねえ。
でも借りとけよ、今日は特に冷えてるからな」
ポンッと軽く、私の頭に手を乗せた流は
数秒間グシャグシャって。私の髪を乱すんだ。
どうしよう...甘い、すっごく甘い。
こんなこと簡単にしてくる流に、ときめかないはずがない。
「...流、ありがとう」
「おー、気にすんな」
「...ついでに手もダメ?」
「...手?」
「流と手、繋ぎたい...」
「...」
一瞬困った顔をされて不安になった。
運悪く、私達の隣を通り過ぎるカップルが手を繋いでいて、余計気まずさを感じたけど。
学校から少し離れた所で、スルッて。
流の冷たい手が私の手を握ってきた。