【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー
お店の中はそれはそれは外見にも負けないくらい素敵で、アンティークな世界観に胸が躍る。
「いらっしゃいませ」
木で出来たイスに腰を下ろすと
ヌッと突然現れた影の薄いイケメン店員さんに驚いた。
そのせいで座ったばっかりのイスから落ちそうになったけど、なんとか踏ん張って耐えた。
お水とメニュー表を置いて、キッチンに戻る店員さん。
「...はあ...」
この場に似合わないため息一つ。
...ダメだ私
こういうとこホント緊張しちゃう。
外食なんて何年ぶりなんだろう
圭は絶対ご飯なんか連れて行ってくれなかったし。
それに比べて流はほんと自由で一緒に居てすっごく楽しい。
悪気はないけど、イヤでも比べちゃうよ、流と圭のこと。
「ここのシチューが美味いんだよ。
俺、シチューにしよ」
メニュー表も開かず一瞬で決める流。
慌ててペラペラメニュー表を捲って、どれにしようか悩んでいると。
前から流がくすくすと。
綺麗な顔で私を見ながら笑っていた。
「別にそんな慌てなくても、ゆっくりでいいぞムギ」
「...じゃあ私もシチューにしようかな」
「まじ?
別に無理して俺に合わせなくても、お前の好きなもんにしろよ」
「ううん、シチューにする、シチューが食べたい」