【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー






「さっき暴走族の話...チラッとしたよね?」



言いながら私の顔を覗いてくる優美。



私は黙ってこくりと頷いた。




「...その人暴走族の総長やっててね、...別にそこはどうでもよかったの。
彼が何であれ私は彼のことが好きだから。
...だけど、だけどね。」


「...」



「ある日、彼の女が私だとバレて
当たり前、私に嫌がらせする人たちが増えたの。
でも彼が護ってくれるから安心してた...絶対に別れたくなかったし」



「...」



「でもね、幸せって案外簡単に崩れていくものなの」



「...」



「彼と敵対してる族に私、拉致られちゃって」



「えっ!!??」




そんな事って本当にあるんだ...っ



思わず大声を出してイスから立ち上がったけど
すぐにお尻をイスに戻した。



そこからは苦痛の連続だった。




険しい表情で話す優美。
聞いていて辛かった。




"姫"
暴走族に護られる存在。



優美は総長の女ってことで、姫として色んなことから皆に護られていたらしいけど...


その護りだって完全ではない。




拉致られた優美は
もちろん優美の彼氏が率いる族を呼ぶための囮(おとり)の役割で。




何されるか分からない状態で
優美はずっと彼のことを信じて待っていたらしい...



だけど彼は現れなかった。




そして裏切られた優美はそれだけでも絶望という名の崖から
命綱なしで落とされてるのに




囮を使っても来ない事に怒った優美を拉致った族が優美に八つ当たり




優美は身体中傷だらけに...



でも体より当たり前心の方が痛くて



助けに来てくれなかった彼を怨む前に
"なんで...来なかったの?"って。


悲痛の鐘が鳴る。




...それから彼の姿を一切見てないらしい。







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