【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー
こんなにひどい人初めて見た
一歩間違えれば圭よりタチが悪いかもしれない。
流の家に居座って数時間しか経ってないのに、流の匂いが服に染み付いていた。
怒り任せに立ち上がり玄関に向かう。
玄関のドアノブに手を伸ばせば
「帰るとこなんかねーくせに、出ていくなんて勝手だなムギ」
ダンっ!!と流の長い足が玄関のドアを開けられないように押さえた。
「流は絶対何もしてこないと思ってついてきたのに...魔が差したって理由でキスしてくる男なんかと一緒に居られるわけないでしょ...!」
「ああ、確かに俺はお前に興味ねーし、キスするつもりもなかった。
でも所詮男と女だ、一つの間違えぐらい起きて当然だろ」
「...っ...」
食後の一服と、高そうなライターでタバコに火をつける流。
綺麗な指に挟まれてるタバコを見て縛られたような感覚に陥ったのは、この家から出ていく勇気が出ないからだ。
「家なしのお前が野宿する方が危険だろ。
ここら辺は危ないからな、お前なんか簡単にやられてポイだよ。言ってる意味...わかるだろ?」
脅してきた、いや脅すというより警告なのかもしれない。
そっと...掴もうもしたドアノブから手を引っ込めた。