【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー
「...ムギ、これ着とけ」
「あっ...」
流が着ていた上着を脱いで私に借してくれた。
外に出たから急に体が冷えたんじゃなくて
さっき男に制服のボタンを外されて前が全開になってたから風を通して寒かったんだ...
忘れてた恥ずかしい...。
...それにしても、全部が全部夢だったんじゃないかって疑っちゃうくらい
流が来たあの瞬間からすぐに終わった、絶望。
数分もしないうちに男を倒すなんて...
流とあの男の力の差は可哀想なくらい歴然だった。
「何も...されてないんだよな?」
「...へっ?」
「いや、服。脱がされてたから。
...悪い、来るの遅くなって...悪かったな」
「ちがっ...!何にもされてないよ私!!
それに流助けに来てくれたじゃん!!!!
私...流のこと怒らせたのに...なのに助けてくれて...ありがとう...っ...」
泣いて許される問題じゃない事くらい分かってる...っ
分かってるけど、今だけは許してよ...。
あれだけ注意しろと言われ続けた敵に拉致られるなんて
流の足を引っ張ってることくらい分かってても
それでも、やっぱり流の傍にいたいと強く思った。