【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー
しばらくして、家の前までやってきた。
電気の明かりが、カーテン越しに窓から漏れているのを見て、両親がまだ起きていることに安堵する。
「もう夜の9時だし。やっぱ明日出直した方がいいか?」
家の前までせっかく来たというのに。
今更怖気づく流に、苦笑いしてしまう。
「今まで散々、好き嫌いやってきた男がなに言ってんのよ…流らしくもない」
「バーカ、俺は今さっきから、普通の人間になったの。
もう不良じゃなくていい子ちゃんなの。
わかりまちゅか?」
「バカにしてるの?」
「冗談だ」と、自分と私の緊張を少しでも和らげようとする流の優しさを、私は知っている。
門の前にバイクを停めたはいいが、相変わらず流の赤色のバイクは目立ってる。
父と母は真面目だから
バイクを家の前に置かれることすら嫌がると思う。
というか、近所の人に見られて、変な噂されることに一番恐れている。
…変なの。
人の目なんか気にして生きてたら
楽しいもんも、楽しめなくなっちゃうのに。
そりゃあ、まったく人に気を使わないのもどうかと思うけど
使いすぎて、自滅したら、それこそ意味がないじゃない。
流は私の家になかった、゙らしさ゛を持ってる。
だから惹かれたのか。
私の、私らしさを持っているのは
もしかして流自身なのかもしれない。