【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー




父の言葉が、自分勝手な思いが
どれだけ今まで私を傷つけてきたのかを知る。


でも。


それは親ならではの悩みだと。
少し同情してしまう自分がいることに驚きを隠せない。



「もう遅い。帰りなさい」


話すことなどない。と、言わんばかりの父の硬い口元に、絞り出せるほどの言葉が見つからなくて。


その寂しげな背中に一言言ってやりたかった。


けど。



そんなに広くもない家の、今日だけは異様に長く見える廊下から、お母さんがこちらに向かって歩いてくる。



父はそんな母の横を通り過ぎようとすると。



「……そろそろ、紬の言うことにも、耳を傾けたらどうなの。」



父がちょうど、母の横を通り過ぎた瞬間だった。


お互い振り向き合い、目を合わせる。


まさか母の口からそんな言葉が出てくるなんて。


驚いたけど、私なんかよりもずっと
お父さんの方が驚いている。



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