【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー




「…なにを言っているのか、分かっているのか」


「紬はもう…子供じゃないのよ。」


「良し悪しも分らない人間の、どこが子供じゃないんだ」


「それじゃあ、あなたもじゃない」


「ーーッ!?」


「いいえ、あなただけじゃないわ、私だってそうよ。
 この子がやりたい事すべてを否定してきた。
 この子が望んでいたことを、否定するなんて…そんなの大人の皮を被った悪よ。

 縛り付けることが、教育とは言わないじゃない」


目いっぱいに、涙を浮かばせる母。


こんなに言葉を発した母を見るのは初めてだった。


いつも父の言いなり、それが母の印象で。
逆にそれしかないことに、この人は生きていて楽しいのだろうか。とさえ思う時があった。


でも、そんな母が、初めて親らしいことをしている。


私はそれを見て、何かが心に突き刺さり、それはジワジワと私の体内を侵略したの。



「紬、もういいのよ。
 ごめんね、我慢ばかりさせて。」



ついに父と目を逸した母の視線は、私に向けられる。


言いたいことはたくさんあるのに
何を言っていいのか分からず、今日まで溜まり溜まった涙を流していると。



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