【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー




流が玄関のドアの前すれすれで止まり、もう一度振り返る。



「んな、悲しそうな顔するくらいなら、もっと大事にしてやれよ…おっさん。
 不器用すぎんだよ、言いたいことがあるなら、遠回しじゃ駄目だ……っ、素直に言わねえと伝わらねえことだってあんだよ……!!」



今宵は満月でしたか。


流の口が、抑えられない悲しみと一緒に大きくなって、その口の中から見えた八重歯は牙のようで、まるで狼みたいだなって思った。



「ムギ。」


こつん、と。軽く流に額を叩かれる。



「大丈夫、まだ壊れてない」


「…」


「お前はまだ愛されてるよ」


「…っ」


「必要とされてんだよ。
 俺にも……そして親にもな」



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