【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー





ふと、後ろにあるドアに目をやる。


なぜか流の姿がどこにもない。


確かに隣りに居たはずだった。



「りゅ…っ!」


私を抱きしめているお母さんの体から離れ、勢い良くドアノブを掴む。


「出ていって…そんなに時間は経っていない」


っと。

信じられないことに、真正面から流を見ていた父が教えてくれた。


それって、流のこと認めてくれた、お父さんなりの合図だって……思ってもいいの?


「ありがとう…お父さん」


自分でも驚くほど素直になれる。


ガチャっとドアノブを下げ、家から飛び出そうとすると。


「父さんも…っ、悪かった…!」


「……」


「傷つけて、嫌われてるって分かっていても。
 嫌われてるって自覚すればするほど腹が立って、お前自身に当り散らしていた」


「…」


「ごめん……ごめんな、紬」



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