【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー
生まれたときからずっと、この家で暮らしてきて
それは私の成長を見届けようと、どんなに汚れても、雨に打たれても、外から攻撃してくる敵から私を守ってくれた。
暖かい。
帰ってきてもいいと、無言のまま迎え入れられる家がある。
その家から飛び出し、勢い良く満月が不気味に光る夜の世界へ足を踏み入れると。
「りゅう……」
勢い良く飛び出したくせに、かっこ悪い。
家の前に停めていたバイクに跨る流と、すぐに目が合う。
「話し合いは終わったか?」
被ろうとしていたヘルメットの手を止め、流が優しく言う。
「ばか…っ、急にいなくならないでよ」
私は流の前に立ち、彼の二の腕にもたれかかるようにして、額をくっつけた。
「親子の会話に…これ以上、俺は邪魔だったろ」
「そんなこと、ない。
流がいなきゃ、きっと私達家族は、壊れた関係のままだった。」
「ハハッ…ムギは大げさだなぁ」
大げさなんかじゃないよ。
そんな言葉で片付けてはいけないの。
流はヒーローなの。
色んなものから私を守ってくれるヒーローなの。
だから。