【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー
流は、本当の愛をよく分かっていなかったと思う。
自惚れたこというようだけど…それは私に出会うまでのお話。
流も親に愛されていなかったから
無理矢理にでも私を繋ぎとめておきたかった。
その壊れてしまった心が再生するには
私という存在を彼の心に埋めてあげなきゃならなかった。
そしてそれは、私も一緒で。
壊れてしまった二人の破片で、もう一度作り直すことができた”心”は。
前よりもずっと綺麗で、愛しい。
「ムギの家族は、俺の家族と違って、まだ”大丈夫”だったろ?」
「流の家族だって…!」
話し合えば、まだ間に合うかもしれない。
そんな勝手な言葉を口にしようとすると
流は私の唇に、人差し指を押し付けた。
「もう、破片も見当たらないほどに、俺の家族は壊れてしまった。
音信不通。
海外で暮らしているのは間違いねえが、今どこで何をしているのか、分かんねえ」
「…」
「俺より仕事……夢を選んだんだ。
それなりに覚悟はあってのことだろ。
相変わらず、仕送りだけはしてくるし」
「…」