【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー
寂しそうに話す彼に、何て声をかけてあげればいいか分らない。
悔しくて、顔を歪めると。
ーーギュって。
バイクから降りた流が、私を強く抱きしめた。
「んな…哀しそうな顔…すんなよ」
「…っ」
「泣けちまうだろーが…っ」
寒空の下、冷たい夜風が、流の涙で濡れた肩を集中攻撃してきて、今にも凍ってしまいそうだと思った。
強いだけじゃない。
強い、なんて。そんなの弱さの裏返しで。
強いと思っていた男が、私の肩に顔を埋めて、静かに泣いている。
それが寂しくて、愛おしくて、そして暖かくて。
私も一緒になって泣いたよ。
子供みたいに、わんわんと。