【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー





「でもさ、ムギ」

「ん?」


肩から流の顔が離れ、こんどは視界こそ、見るものすべてが私達を繋いで離れないようにと。

流の瞳は、星が散らばったかの様に、涙で潤っていて、とても綺麗。


愛しそうに見つめてくるその目に、愛されてしまった私は、幸せどころかじゃ済まされないような気がして。


ぜんぶが流で、いっぱいいっぱいだ。



「お前といると落ち着くし、お前がいるだけで、俺の世界は安心するんだ。」


「…」


「もし、俺が親と向き合える様になったその時こそ。
 真っ白なドレスを着たお前を連れて、一か八か賭けてみたい。」


「りゅう…」


「俺もまだ子供だから、向き合える自信はねぇが。
 いつか、両親と一緒に酒なんか飲んだりしてさぁ。
 『あの時は、あぁだったな』とか、くだらねえ話がしてぇんだ。

 たとえ、無理だとしても」



無理なんかじゃないよ、って言ってあげたい、けど。

そんな気休めな関係じゃ、駄目なんだ。


だからこう言おう。


「いつか叶いますように…。
 叶わなくても、私が隣にいるから、将来は幸せですね」



なんて。


らしくない言葉を吐けば

流が「こりゃあ参った。」と笑った。



ぜんぶ幸せにしてあげる。

これから見る世界すべてを。



あなただけは絶対に、幸せにならなきゃ……駄目だから。





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