【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー
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次の日目を覚ますと。
私の視界に触れるものすべてが、変わって見えたような気がする。
部屋に置いてある、子供の頃抱きしめて寝て熊のぬいぐるみだって
胸元に縫い付けられているボタンが一つなくなっていても、魔法がかけられたかのように、どこか新品に見え、何度洗っても汚れが落ちないのに顔色はいつもより良く見える。
「神庭君によろしくな」
身支度を済ませ、学校に行くにはまだ余裕がある時間だけど。
一度やってみたかった、パンをくわえながら登校するという夢を実現させるため
パンをくわえ、玄関で靴に足を入れると、父が私の頭上で、優しい言葉をかけてくれた。
「こんど、流を誘って、一緒にご飯でも食べようよ」
くわえていたパンの部分をかじって噛み、そして飲み込み、そう言うと。
「母さんにそう伝えとく」と。
昨日までの父なら、絶対に言いそうにない返事が返ってきた。
「いってきます」と父に言い、私は家から飛び出した。