【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー
私に逃げられないように、勢いよく閉まったはずのシャッターがいつの間にか音も立てずに開いていた。
ヒヤッと、なにかが胸の奥を触った。
嫌な予感がして、そっと頬に伝う汗を手のひらで拭きながら後ろを振り向いた。
「よう」
「...りゅ...う、?」
通話中と表示されてるスマホ画面が真っ暗になり
気配を綺麗に消しながらいつの間にか後ろにいた流の姿を見て、心臓から鈍い音が聞こえてきた。
「なんで...流、助けに来てくれたの...?」
「ーーーあぁ、助けに来たっていうか、この俺の計画通りというか。
ほんと思い通りに動いてくれるよな、ムギ」
「...りゅう?...ねえ流だよね?」
「ああ俺だよ俺。何回名前呼ぶんだよ”ムギ”」
目の前にいるのは確かに流...なのに、流じゃない他の誰かに見えて怖い。
不安が荒れ狂う波のように手加減なしで襲ってきた。
怯えながら流を見つめていると
流は私から離れ、夜季の下っ端の前を堂々と歩いて圭の前に立った。