【完】壊愛ー姫は闇に魅入られてー
鼻をすする音が、ほとんど何も置いていない真っ白な部屋に響く。
瞼を閉じて真っ先に思い浮かべた顔は親でも圭でもなく、流の顔。
一緒に暮らしている間、ずっと隣で笑ってた流の顔が恋しい。
少しだけ尖った、八重歯に近い歯だって
無許可で私に触れてくる手だった
無理矢理キスしてきたその唇だって。
今じゃあ魔法がかかったかのように
愛おしく感じてしまう。
精神的に参っちゃってるみたい
流の女にでもなんにでもなるから
とひあえず私を自由にしてほしいーーー...。
今日は絶対に流が帰ってくると信じながら
閉じた瞼に力を込めて無理矢理眠りについた。