エンドレスおままごと。
「それって新婚旅行じゃん?」
「まだ結婚してないから! えーと、婚前旅行? になるのかなぁ」
「本当うらやましいー! マジずるいよ人妻ー! あたしも早く結婚したいー彼氏と同棲したいー」
「まあ、同棲っていいことばっかじゃないよー。相手の悪いとこも見えてくるし。わたしよく便器落ちそうになるもん」
「ちょっと! その悩みぜいたくすぎ!」
たこ焼き屋の看板案を考えていたはずなのに、いつの間にか恋バナで盛り上がっていた。
代休の日にカラオケ打ち上げしよーよ、という話題になり、わたしが行けない旨を伝えた結果、誘導尋問がスタートし、今に至る。
「ちょっとミシマー。真面目に描いてないであんたも話入ってきなよー」
「…………」
女子にそう話しかけられても、ミシマだけはもくもくとお店のイメージ図を作っていた。
恋バナのターンが次の人に回った時、彼のスケッチブックをちらっと見てみた。
相変わらずこいつは空間を表現するのが上手い。
わたしもシャーペンを動かし、看板のイラスト候補を描くことにした。
「うち彼氏と別れそうだよ。文化祭終わったら模試地獄だし会うヒマないしさぁ」
「あんたは内定出たんでしょ? あとは遊びたい放題じゃん」
「まー最後の自由な時間だからなー」
みんなの話題は恋愛から進路へとシフトチェンジされていく。
でも、次第にまわりの声が聞こえなくなる。
右手が止まらなくなる。プリントの裏に想像通りの造形が姿を現していく。