エンドレスおままごと。
☆
左手の指輪を天井の明かりにかざす。
中心で光るダイヤモンドは吸い込まれそうになるほどに美しい。
安物でゴメン、と言われたけど、そんなの関係なく嬉しかったし、凛とした雰囲気のデザインもとても好き。
家事やお風呂の時以外はいつもつけていたいけど、ミシマの言う通り汚れそうだし、色塗りをするときは外した方がいっか。
昆布のだし汁と醤油の香りが部屋まで広がっている。
今日の夜ご飯は、お母さんに教えてもらった自慢のおでん。
長い時間煮込んだし、味もちゃんと染み込んでいるはず。
――あれ。なおくん、遅いな。
携帯を見ると夜8時半。メッセージはない。
おかしい。残業や飲み会の時には連絡が来るはず。
「……はぁ」
最近、なおくん帰ってくる時間がまばらすぎるんだよな。
ご飯ができるタイミング、ぴったり合わせるの結構大変なのに。
ぐつぐつと大根や卵が煮込まれていく音が、わたしの心の隙間を広げていく。
仕事ってそんなに大変なのかな。携帯いじる暇もないのかな。それともわたしに連絡をするのがめんどうなのかな。わたしよりも仕事が大事なのかな。
……そんなこと考えちゃだめだ。
なおくん頑張っているんだし、帰ってきたら笑って迎えてあげなきゃ。
でも、おなかすいた。ヒマだ。