それは、ダリアな恋模様
何度も繰り返してきたようなやり取り。私の返答を知っている癖にあまり変化のない台詞を投げかけてきては、その度に白くて華奢な首元に風を送っている。
幾度とチラつく白い肌。キラキラと肌についた水滴が反射して。
汗の匂いが、私の鼻腔を擽った。
……暑いなら、脱げばいいのに。
そう思ってカーディガンに視線をやるけれど、ソレを脱げれない理由を、薄くてすぐに透けてしまうような長袖シャツではダメな理由を、私は知っているから___
声のかけ方に困難してしまって、もどかしい。こんなの、まるで喉に言葉が詰まっているみたい。
「は?」
シュイーン、そんな勇ましい操作音が何度か繰り返された後に、唐突に水戸和の表情に影が刺す。
「まじかよ、イベント終わってるし……」
口元をひくつかさせて、スマホを唖然と眺めるその横顔が、
「え、死にたぁ……」
「…っ水戸和」
容易くその言葉を口にするものだから、焦ってしまって。
思わず水戸和から信号機へと視線を逸らして、また言葉を選ぶけれど、相応の話題なんて考える余裕も無いくらいに心臓は静かに心拍数を高めるばかりで。
まだ赤い信号機が憎たらしくて、
〝青になったよ〟
としか話を逸らしてしまう術を知らない自分が情けなくて。
__車なんてどうせ通らないのに。
ほら早く、早く青色に変わってくれ、
「馬鹿だねー、ゲームごときで何言ってんのさ」
今時のご世代。
周りの人間は何かに付けて〝死にたい〟と生きることを放棄したがる言葉を口にする。それはもう語尾のように軽く、口癖のようにポツリ、ポツリと。
当たり前に日常会話として話題に取り入れられるその言葉に「じゃあ、死ねば。私は困るけど」なんて軽いノリで、けれど情けなくも保険を掛けつつそんな返答をするのが最早テンプレート。
それなのに彼の言葉にだけは、彼の口から出てくる〝死〟のワードにだけは、強く反応をしてしまって。
人並みの教養しか備えてない脳内の中で、必死に手探りで返す台詞を探している。