それは、ダリアな恋模様
どうすれば〝その場のノリ〟として最適に流せるか。
そんな方法をいつも静かに、だだ探している。
__それは、私が水戸和に依存している事実を示す十分な証拠だった。
「そう言うけどね、これでもう今月はUR手に入んないの」
「来月があるよ」
「今月の話をしてんだよ」
パタパタ、揺れて。
彼のカーディガンが視界の片隅でチラついた。
チャコールグレーだと言ったその色味は、白と較べると酷く濁ってしまって、けれど黒になりきれないような、そんな色。
その色は本人が好きだと言うオレンジ色なんかよりも余程、水戸和のことを的確に表現していた。
___今度は暑そうに、首のほうまで伸びた茶色い髪の毛をはためかせる。
「諦めるしかないよ。あ、青になった」
「………結局車通らねぇじゃん」
「明日は通るかも」
「明日は引っかからないようにしようぜ」
スマホを触りつつ、短い横断歩道を渡りきった背中を追いかけながら「歩きスマホはんたーい」なんて適当な言葉を投げ掛けた。
「後ろで騒音立てるのはんたーい」
「私の声、可愛いって評判なんだから」
「……俺も嫌いじゃないよ」
「…ふぅん、私は別に大好きだけど」