◆中学生物語◆
翔太と2人っきりで話すなんて、初めてだ。声も出ない。



「い…やぁ、その…あたし、体育は毎…回決まって休んで…る…から…」



うまく呂律が回らない。



「へぇ~。おまえって体育系って感じすっけど意外にダメなんだな」



…悪かったね、ダメで。



「う…うん。部活だって、美術部で、運動とかに全然縁ないし…ほんとにダメなの、あたし」



「…あ~、だからこの間100m測ったときあんな遅かったんだ」



「え!?う…うん」



…不思議と、翔太と話せていた。



意外にも…翔太はあたしみたいな平凡女とも、話してくれるんだなって思った。



…優しいって、思った。



―それから、どれくらいだろう。体育が終わるギリギリの時間まであたしたちは話していた。



話したことなんて、どうでもいいことばっかりで、翔太にとってはすごい小さいことだったかもしれないけど、



…あたしは、すごい大事になことに思えた。



< 10 / 138 >

この作品をシェア

pagetop