◆中学生物語◆
□□



―昼休みになると、あたしは桃子に事情を言って急いで屋上へ向かった。



…が、まだ翔太は来ていなかった。



「はぁ…はぁ…なんだ、まだかぁ…」



あたしは、走ることは苦手なだけに、ちょっと走っただけでものすごい息を切らしていた。



…そして、まだ誰もいない屋上で、あたしは1人、外の風景を眺めていた。



…もう山のたくさんの木々たちも、衣替えを始めている頃だった。



あたしは、その光景に、我を忘れた。



…それから、疲れた体をそっと宥めるようにしてゆっくりとその場に座り込んだ。



…すると、屋上のドアが、静かに音を立てて開いた。
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