◆中学生物語◆
「え?…べ…別に…」



桃子は、俯いたまま顔を覗かれるのを避けるかのように背けた。



「桃子……」



―キーン、コーン、カーン、コーン…



…チャイムが鳴った。



桃子とあたしは、何も言わず、席に着いた。



(桃子…ホントにどうしたんだろ…)



あたしは、ただただ翔太のいない机の上だけを眺めながら考えていた。



翔太の机には、無数の落書きの跡が。



まだ先生のいない教室。



みんなはまだ騒いでいる。



あたしはそっと、その机を撫で下ろした。



その落書きの中には、『ゆーほアイシテル』という文字があった。



…片思いって、やっぱり辛い。

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