トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「凄いなここは。加熱用のトマトだけで3種類も置いてある。」


兄がカートを片手に興味津々に品物を選んでいる。明らかに嬉しそうだ。


その様子を冷めた目で見る篤さん。


「食材から買うの?

あっちにデリのコーナーもあるんだけどー?」


「兄がああなったら、もう止めるの無理かも。料理人モードって感じです。」


「あいつ料理とかするの?大丈夫?」


「凄く美味しいですよ。お店で食べるみたいに。」



いつの間にか食材を集めて戻ってきた兄が、わくわくした様子で篤さんに尋ねる。


「調理は任せろ。篤のリクエストも聞くぞ。」


こういうときの兄は、頭に耳が生えて尻尾をぶんぶんと振っているような感じがして可愛い。


「お前は俺の彼女か?

俺は何でもいいよ。あっちで酒でも選んでくる。」


「篤が選ぶとビールばっかりになるからな……辛口の白ワインも頼む。銘柄とかは適当に選んで。」


「分かったよ、シェフ。」



兄がシェフなら、篤さんはさしずめソムリエといったところかな。そんなレストランがあればきっと大盛況だろうなと、ぼんやりと眺めながら思った。
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