トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり

見慣れないフルーツが並べてある果物コーナーを覗いていると、


「瑞希は俺の側から離れないで」


兄に手を引かれ、耳元で囁くように告げられる。


兄が無意識にしているその行動も、私はついドキドキして、……そしてその分だけ傷つく。


兄は今も私の身を心配してくれていているのに。


こんなことで傷つく私は、幼稚だ。



兄を見上げて、その引き締まった顎と整った鼻梁、切れ長の深い目元を見つめた。


何度となく見上げても見飽きることのない兄の顔を、習慣のように目に焼き付ける。



「うん、大丈夫だよ。お兄ちゃん。


ここ、生のライチがあるよ。珍しいから買っていこう。」


「ああ、そうするか。」


兄の背に隠れてせり上がる喉の痛みを飲み込んで、涙が流れるのを必死に止めた。