トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「瑞希が、誰かに嫌がらせを受けているんだ。」

キッチンで食材の下拵えをしながら、兄が説明を始めた。


それまで兄の料理の手捌きに歓声を上げていた篤さんの表情が、スッと冷えていくのが見える。


「いつから? 具体的には、どんな?」


「CMの公開日からだな。一週間くらい前か。


手紙が送りつけられて。内容から察すると、篤に近づいたことへの嫉妬って感じだ。」


「具体的には何が……」


質問した篤さんを、兄が首を振って止めた。昨日から何度聞いても、その内容は教えてはくれないのだ。


「俺のファンの人ってことか。


ごめん。こんな形で瑞希ちゃんに危害を加えることになるなんて。」



「篤の責任じゃない。だから、謝らないでくれ。

それよりも、スタッフで篤のファンの人知ってるか?」


「スタッフ!? 内部の犯行なわけ?」
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