トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「まだ決まったわけじゃないんだが、CM公開日に瑞希のフルネームを名指しで送り付けてたから、調べたにしても情報が早すぎると思う。」


「確かに、瑞希ちゃんの名前は公開してないよね。顔だって仮面やらメイクでけっこう変わってるし。すぐにはわかりにくいはずなんだ。

瑞希ちゃんは、友達とかに撮影のこと言った?」


「いえ、誰にも言ってないです。」


「そうか。……スタッフって言ってもなぁ。かなり人数いるし。」


「それに、盗聴器が瑞希の鞄に仕掛けられてたから、実際に接触してる人間じゃないと難しいと思うんだ。」


「盗聴器か……」


篤さんが何か考えるように間を置き、続けた。



「……その盗聴器は、今どうしてるの?」


「そのままにしてある。今日は鞄ごと物置に入れて、会話は漏れないようにしたんだけど。」


「……それってさ、盗聴器に気付いたことは犯人にバレてないってこと?」


「今時点では、わかってないはずだ。ただ、急に生活音が聞こえなくなると不自然だからな。このままにしておけば気付くのも時間の問題だ。」


「そっかー。盗聴器入ってるってわかっててそのバッグを持ち歩くのも気持ち悪いもんね。」


「そうなんだ。それでも、警察の捜査に必要な時間稼ぎくらいにはなるかと思って。」


「ん? それってどういうこと?」
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