トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
一方、奥村篤は拓真と別室に移り、悪質な嫌がらせの証拠を確認していた。彼の写真を見る顔つきは険しい。


「嫌がらせで済ませられるほと穏便じゃないよね。殆ど脅迫でしょ。」


「うん」


「次の撮影自体を取り止めた方がいいんじゃない?


瑞希ちゃんだって、本気で芸能活動を目指してるわけでもないでしょ。撮影を止めて、それで安全なら……」



「でも、今だけ危険が去っても意味ないんだ。


犯人は既に瑞希のことを知ってしまったから、この先もターゲットされる可能性は消えないだろ。


瑞希には、そういう影に怯えながら生活させたくはない。だから、何としても犯人を特定したいんだ。」


拓真の主張はもっともなので、これ以上は反論のしようもないが……


「写真に細工してるやつは、特に気持ち悪いな。
十字架に磔とか悪趣味すぎるし。無駄に凝ってるし。」


「異常だよな。」


写真を注意深く見ながら、十字架の英語はcross、二人の兄妹の名字である黒須と読みが同じだと気が付いた。

しかし、名字を示したところで犯人の意図が掴めるわけでもなく、その思索はすぐに意識の隅に消えていった。
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