トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「CMの撮影に関わったスタッフは把握してる?」


「それは問題ない。全員の顔も覚えた。」


「あとは、犯人を見つけやすい場所か……。デートっぽくて、人が多すぎず少なすぎない所。ドコがいいんだろ。


……違うか。もっと大事なことがあった。瑞希ちゃんはどういうとこに連れてけば喜ぶの?」


そう聞くと、拓真は酸っぱいものでも飲み込んだような顔で唇を噛んだ。


「……普通に女性の好きそうな、綺麗なものとか可愛いものとか。そういう感じだよ。」


「聞いといて言うのも変だけど、何か調子狂うな。


『瑞希のデートに合う場所なんか教えるか』とかって怒ると思ったけど。」


「瑞希は落ち込んでるし、俺じゃどうしようもないこともあるからな。」


「?」


拓真は曖昧に笑うだけだったので、それ以上踏み込むのは止めておいた。


「ま、何か考えてみるよ。早い方がいいから明日の夕方にでも行こう。

今日は帰って瑞希ちゃんの盗聴器入りバッグを出しといて。」


拓真は意を決したように頷いて、小さく「頼む」と返した。
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