トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
10 デート
翌日の夕方、身支度を整えた瑞希は兄の拓真からバッグを受け取った。気持ちの問題だけれど、盗聴器が入っていると思うとバッグはいつもより重たく感じられる。
盗聴器があることがわかってから慣習になりつつある筆談で、兄がメッセージを見せた。
(危険が無いように見張ってるから、心配しないで)
ありがとうと伝えると、兄が笑って頭をぽんぽんと撫でる。玄関先に車が停まる音がして、兄が「行ってらっしゃい」と部屋に戻ろうとするので袖を掴んで引き留めた。
(篤さんに会っていかないの?)
(瑞希をデートに連れ出すやつの顔なんか見たくない)
兄は少し困った顔をしてそう書いた。
私のことを振ったのに、その思わせぶりな言葉。
胸にちくっとした痛みを感じて、どう返事して良いか迷ったけれど、結局「行ってきます」とだけ言って扉を閉めた。
盗聴器があることがわかってから慣習になりつつある筆談で、兄がメッセージを見せた。
(危険が無いように見張ってるから、心配しないで)
ありがとうと伝えると、兄が笑って頭をぽんぽんと撫でる。玄関先に車が停まる音がして、兄が「行ってらっしゃい」と部屋に戻ろうとするので袖を掴んで引き留めた。
(篤さんに会っていかないの?)
(瑞希をデートに連れ出すやつの顔なんか見たくない)
兄は少し困った顔をしてそう書いた。
私のことを振ったのに、その思わせぶりな言葉。
胸にちくっとした痛みを感じて、どう返事して良いか迷ったけれど、結局「行ってきます」とだけ言って扉を閉めた。