トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「……どうして、私のこと好きになってくれたんですか?」


篤さんは少しの間をあけた後、あっけらかんと言った。


「こればっかりは、さっぱりわからないな。

自覚した時、何でよりによって君だったんだって自分を呪ったもん。」


その答えに拍子抜けを通り越して、ちょっと傷つく。


「意外と酷いこと言ってません?

確かに私を選ぶ理由なんてないと思いますけど……。」


「ごめんごめん。言い方を間違えた。


どうして拓真の妹なんだってこと。ままならないものだなー、と。」


静かな笑顔を浮かべて篤さんは言葉を続ける。


「君だって同じこと思ったことあるんじゃない?

『どうしてお兄ちゃんを好きになったんだろう』とか思わなかった?」


「はい……思いました。何度も。」


「そういうことだよ。


好きな理由なんていくらでも思い浮かぶけど、


例えば最初に会った時、たかだか撮影のワンシーンなのに泣きながらモニターを睨み付けてるのが可愛かった。

俺、女性の嫉妬って苦手なのに何故か惹かれて。」
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