トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
篤さんは私を横目で見て、髪をひと撫でしてからまた続ける。


「あとは、思ってること以外は口に出来ないところも。素直ってレベルを越えてて面白くて。


それから、撮影中にフラフラになってても根をあげないで、ずっと頑張ってるのも見てたし。


拓真の横顔をこっそり見て幸せそうにしてるとことか、いじらしくて頭撫でたくなる。」


篤さんの声も表情も暖かくて優しくて、何故だか苦しい。篤さんと会ったのはまだ片手で数える程なのに、私の知らない私を知っているみたい。


「前の撮影でジュリエットやった時だって、綺麗で見惚れたよ。真顔のツンとした感じと、笑った時のギャップがまた可愛いわけ。」


「も、もう十分お腹いっぱいです。」


「そう?まだいくらでも言えるのに。好きな理由なんてそのどれでもあるし、どれでもない。

気が付いたら好きになってたっていうのが一番しっくりくるんだよ。」


「……っ」


篤さんが運転中で良かった。顔が赤くて真正面から見られたら困る。
< 115 / 235 >

この作品をシェア

pagetop