トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「そうか……

でもその割には高校の時は剣道部だったよな」


「その頃には、特に気にしなくなったみたいです。

篤さんは兄と同じ高校だったんですか?」


「いやいや、違うよ。拓真って国立の名門校でしょう?俺はそんな頭良くないから。」


篤さんの言う通り、兄はとても成績優秀なのだ。

高校や大学だって、家から近くて学費が安いという理由で難関で有名な国立に通っていたから、私は兄と同じ学校に行きたくても無理だった。


篤さんは頭が良くないなんて謙遜しているけど、仕事中の様子はとてもそうは見えなかったような……。


「拓真に会ったのは部活で。俺も剣道部だったからね。」


「篤さんが剣道部っていう方が意外ですね!」


「ははは、よく言われる。チャラいのに何でって。」


「チャラいとは言いませんけど……でも確かに兄はイメージそのままって感じですけど、篤さんはどうして剣道部に?」


他愛ない話をしながらも、篤さんは時々周囲を見渡していて私の身を心配してくれている。


「高校の頃にはこの仕事を掛け持ちしてたから、演技の役に立てばと思って始めたんだけど。

練習試合では拓真には散々やられっぱなしでさ。」


「部活まで演技のために選ぶって、徹底してますね。」


「いつか役に立てばいいやってくらいの気持ちだけどね。

でも、未だに剣道が役立ちそうな役なんてオファーされないなー。」


「イメージと違いますもんね……」


「チャラいから?」


「あはは。気にしてるんですね。」
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